訪問リハビリの現場では、同じ患者さんでも左右の腕でスプリント(装具)のフィッティングがまったく異なることがあります。今回は右前腕部スプリントを作製する中で直面した課題と、その対応について記録しておきたいと思います。
右手をお腹に乗せる姿勢での問題
今回のスプリント作製では、安静時に右手をお腹の上に乗せる姿勢を基本姿勢としました。この動作を行うとき、前腕(肘から手首にかけての部分)は回外(手のひらを上に向ける方向)から中間位(手のひらが横を向く位置)へと移行します。
この動きに伴い、前腕の湾曲(カーブ)の向きが変化します。水平面(横方向)のカーブが垂直面(縦方向)のカーブへと変わり、さらに上肢遠位部(手や手首など、末端に近い部分)の重さが加わることで湾曲がより強まります。
左上肢と同じアプローチでは対応できなかった理由
同じ患者さんの左上肢にはすでにスプリントを作製していましたが、右側に同様のアプローチを試みたところ、尺側(小指側)近位・遠位部に装具の端が食い込む形になり、痛みが生じてしまいました。
左右の腕で体の姿勢や筋肉の付き方、皮下脂肪の分布が微妙に異なるため、単純に「左で成功した方法を右に使う」というわけにはいかないのです。
対応策:内側上顆までカバーするよう装具を延長
内側上顆とは?
内側上顆(ないそくじょうか)とは、肘の内側にある骨の突出部分のことです。ここは神経や腱が集まるデリケートな部位で、軽く触れるだけでも疼痛(ずきずきした痛み)が出現しやすい箇所です。
装具を延長してカバーする
対応策として、肘関節の内側上顆までをカバーできるよう装具を延長することにしました。こうすることで、食い込みを防ぎつつ前腕全体を安定させることができます。
ただし、内側上顆は軽い圧でも痛みが出る部位のため、装具が直接当たると不快感の原因になります。そこでクッション材を装具と皮膚の間に挟むことで圧を分散・軽減する方法を検討しました。
可動域制限への懸念
装具を肘関節付近まで延長することで固定・維持効果は高まりますが、肘関節の運動が制限される可能性も生じます。これは日常生活動作への影響にもつながるため、着用後は関節の動きを確認しながら慎重に調整を重ねていく必要があります。左上肢のスプリントと比べると、細かな調整が難しい印象でした。
包帯の選択と皮膚管理
スプリントの上から装着する包帯には、ネット状の伸縮包帯を使用しています。通気性があり、固定力も適度で使いやすい素材です。ただし、以前にかゆみが出たことがあるとのことでしたので、着用後は皮膚の状態(発赤・かゆみ・湿疹など)を毎回確認しながら継続使用していくこととしました。
左上肢のスプリントは本日より着用を開始し、経過を評価していきます。スプリント作製は「作ったら終わり」ではなく、その後の観察と微調整がとても大切です。
まとめ:スプリント作製は個別対応が命
今回の事例を通じて改めて感じたのは、スプリントのフィッティングは患者さん一人ひとりの体の特性に合わせた個別対応が不可欠だということです。左右差があること、姿勢によって前腕の向きが変わること、デリケートな部位への配慮など、考慮すべき要素は多岐にわたります。
訪問OTの現場では、作業療法士が患者さんのご自宅に伺い、その方の生活スタイルに合ったリハビリや福祉用具・補装具の提案ができます。スプリントについても、ご自宅での動作を直接確認しながら作製・調整できるのが訪問リハビリの大きな強みだと感じています。
引き続き経過を観察しながら、最適な状態を目指していきたいと思います。

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